« 動物電気『三女の食欲』 | メイン | グリング『虹』 »

2006年12月23日

もしもしガシャ~ン『生まれ晒し』

タイニイアリスにて、埼玉県劇団もしもしガシャ~ンの『生まれ晒し』を見てまいりました。こちらはタイニイアリスのアリスフェスティバル内の公演でした。

もともとは仙台の劇団との事・・・東北大学出身の劇団みたいですね。最近東京進出してきて、晴れて埼玉県劇団になったとのことです。私と同じ埼玉在住というのは、親近感が沸いてきます。ということで、進出後第1作品が今回の「生まれ晒し」みたいですね。

そして、その作品は強烈な密度をもった演劇体験をさせてくれた・・・簡単には型に納まるまいという心意気が、こんなにも簡単に観客に伝わってくる作品が過去にあっただろうか。作家・出演者の意識が脳みそに直接流し込まれるような、そんな体験に満ちていたのである。

物語は擦り切れた畳敷きの子狭い一室で進む。肉襦袢をまとってデブに扮しているたかはしみちこが、泣き叫ぶシーンで物語は始まる・・・そこに男が迷い込み、ハンバーガーを与え泣き止ませると共にサッと消え去るのだ。
電話から流れる時報の音と共に女の妄想はスタートする。どうやら、女は多くの男から愛されているようだ。それが妄想なのかどうなのかは定かではないけれども。

恐ろしいことに、彼女の言葉はほぼ全てが叫びのような声で語られることにある。分厚い肉をまとい、必要以上に大きな声を発し続け、狭い部屋の中で動き回る彼女からは、ものの数分の内に大量の汗が噴出し始めるのだ。さて、開演前には1時間40分ほどの作品と言っていたが、この調子で体も声も保つのであろうかと不安になるほどのスタートであった。

しかし、なんと短く濃密な1時間40分であったことだろう。男との女の2人舞台、いい大人2人のごっこ遊びのようなものを見せられているだけにも関わらず、何の意図も無いかのような舞台を見せられているにも関わらずである。それは、ただただ体験という価値において、十分にその必要分を満たしてくれてしまったのである。この手の作品を見ると、何かしらの物語的な意味を見出そうと躍起になるのであるが、その過程なくしても、その素晴らしさを語り切れてしまうがために、その作業をしようとすら思わない私がいるのだ。

物語が佳境に進むにつれて、2人の振る舞いはより一層大胆になっていく・・・金を使って肉をそぎ落とした女は、最後には普通の体を有していたし、男は医者の姿かたちだったものがいつの間にか臭い工員風になってしまっている。女の股からは水は滴るし、バケツの水はひっくり返される。舞台美術の壁は破壊されつくすのだ。

ここまでなら無茶している作品ということもできたかもしれない。しかしながら、本作品が1つの無茶から出でた奇跡をまとった瞬間に、この作品は私の中で語るべきものになり上がってしまったのである。そのシーンは、将棋の台を2つ重ねて、その上に正座した女が観客に目線を向けつつ語るという場面であった。しかし上に重ねるはずの台の脚はその前のアクシデントで折れてしまっており、女は傾いて重心の崩れた台の上で正座をしつつ、声を張り上げて語りきったのである。観客の多くの人が何か凄いものを見せられたと感じた瞬間だったのではないだろうか。

女優のたかはしみちこのバランス感覚の凄さ、いや、作品を完成させようという執念、または奇跡を起こす才能か・・・所見の女優であったが、何かやってくれるのではないかと期待される怪演であっただけに、そんな曲芸的な行為も起こるべきして起きているように思えたのである。もしこれが、作家の裏の意図で用意されているものだとしたら、それは男を演じた奈尾真のずば抜けたイメージに感服ものである。

最後に簡単に書くが、語られる言語の部分にも、実は興味深いものがある。今回は初見なので表面的な部分に終始してしまったが、次回は言葉の部分にも注目してみたい。そういう見方も可能な、作品であるということだけ付け加えておく。

いやはや、女優たかはしみちこの奇跡に引きずられた傑作ではあったかもしれないが、次回も見てみたいと思わせる力のある劇団であることは間違いないであろう。東京進出してきたということで、今後会える機会も増えるかもしれない。ちょっと注目していきたいと思うのであった。

posted by yositosi at : 21:45

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.gekinchu.com/mt/mt-tb.cgi/2789

コメント

おお、確かにあのシーンはミラクルでした。でも足に少し細工してあるようにも...いずれにしても驚きました。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)