風琴工房『ゼロの柩』
三軒茶屋のシアタートラムにて、風琴工房の「ゼロの柩」を鑑賞してまいりました。
前回公演「機械と音楽」は見ようと画策していたのですが、直前でチケットが取れなかった為に諦めて今回が始めての風琴工房・・・TOKYOSCAPEというイベントに参加されるということである意味東京の小劇場を代表する?劇団みたいです。
今回の作品は2002年に上演された作品の再演・・・1人の死刑囚を巡る群像劇、照明・音響・美術などスタッフ面でもかなりの力量を投じた作品と感じられました。
舞台は斜め十字に組まれており、中心の交差部分が周りと数十センチほど切り離された状態で独立してある・・・そこは死刑囚を拘留するための牢屋として設定され、開演時から1人の男が鳥かごを眺めつづけている。
舞台上の道具は全て天から吊るす形で備えられており、バッグやちゃぶ台、台所の一式までが片側を吊るされて斜めに宙に浮いているのだ・・・そこにぼんやりと当たる照明、凍りついたような静けさをもつ舞台に浮かび上がるそれら生活の跡が、違和感と共に幻想的な姿を作り出している。
風琴工房のお芝居は、この舞台美術からも容易に思い至るのだが、全体を通して「イメージ先行型」の印象を受けた・・・それは物語や台詞といった詩森ろばが描いた言葉を舞台という場所にどのように起こしていくのかという、演出のスタイルに関しての印象である。
彼女が書く言葉は、常に対話という構図を持って描かれていく・・・人間の関係性を手掛かりに、時にはそれすらを道具として用いて、死刑囚の男や死刑を執行する男、更にはその死刑囚の娘など、さまざまな人間の感情と想いを描き出していく。
とはいえ、そこには会話という方法論を徹底しようという意図などは全く無く、どちらかといえば会話らしくない会話、独白的に詩的に・・・その応酬を会話的に見せている。
リアルな会話なるものは、イメージ先行な舞台とは大変に相性が悪い・・・単純にリアルと非リアルの折衝になってしまうからだ・・・その点、対話というスタイルを持ちつつもイメージに裏打ちされた舞台が成せる風琴工房の本質とは、会話にカムフラージュされたモノローグ性にある。
それは逆説的に言えば、モノローグ性が薄くなればなるほど、舞台との親和・バランスが崩れてくる事を意味するだろう・・・今回の舞台でも、主人公と追っかけ男のなどの単純なる会話に落ち着くと如何にも舞台から浮いている気がしていた。
私的で詩的な言葉を対話に載せる・・・その時にその対話の情景は視覚・聴覚などのあらゆる感覚にとって詩的イメージへと昇華されていく・・・風琴工房の難しさは、その叙情詩的言葉と社会的なテーマのバランスなんだと思う。
今回の舞台で言えば、死刑囚の男の時代とその娘が父の影を探す時代・・・この2つが単純な意味でバランサーの役割を果たしており、イメージ先行で徹底的に詩的であろうとする死刑囚の時代は、美しくはあるが難解であり・・・それに対して現実的で社会という構図を配置した娘の時代、人間関係を主体に対話で展開する仕組みは理解はし易いが長ったらしい。
前述のシーンは、男が殺した女との対話であり、モノローグ性豊かに叙情的で大変魅力的であった。
対して、後述の流れでは常に対話の構図を採り、しかもリアルっぽくするが為に情報量は薄く散漫的に、一言で言えば長くなってしまっていた。
死刑囚の娘と死刑執行人の男という2人の感情を描く為に、それぞれ2人ずつ「外部説明役」が登場するのだが、そこまで出してくる必要は無かったのでは無いかと・・・1人ずつで十分かな?。
人を1人多く出すと、結局意味付けやら動機付け、起承転結してやらなくちゃならなくなるので、余計なエピソードが増えますからね。
先に示しように、風琴工房という集団が、対話に潜むモノローグとそこから生まれる詩的イメージを売り物にするならば、もっと安易なリアルは削った方がバランスが良くなるのではないかと・・・。
終結に向かって娘の時代が父の時代に吸収されていく・・・そこからは一気に叙情詩的イメージ、作家の観念の世界に入り込んでいく。
そこからは否応無く引き込まれていきましたね・・・驚きというよりは、プロフェッショナルな上手さを味あわせてもらった気がします・・・全体的にクオリティーが高くて上手いのです。
黄色っていうのは、普段身の回りにある色じゃないからですかね?・・・かなり気味が悪くて鳥肌ものでした。
全体的には好きなテイスト・・・次回公演も観にいこうっと。
posted by yositosi at : 23:02
コメント
お久しぶりです。吉田です。
実は同じ日にこの公演観にいきました。
知り合いの演出家さんに詩森さんをオススメされ観劇です。
今度WSもお邪魔することになりました。
私敵にはとってもよくってやっぱりオススメされてよかったです。風琴さんのおせわになれたらなあなんて思ってます♪
投稿者: よしださとこ | 2005年10月06日 02:13