ジャブジャブサーキット『しずかなごはん』
池袋のシアターグリーン小劇場にて、劇団ジャブジャブサーキットの「しずかなごはん」を見に行ってきました。
シアターグリーン柿落とし公演であり、また第17回池袋演劇祭参加公演でもある今回の公演は、昨年末に行われた公演の再演・・・劇団内からの再演の要望やさまざまな思惑が相俟って、早い時期での再演に漕ぎ着けたようです。
そうそう、シアターグリーンの柿落としという事だったのですが、大変素敵な劇場が仕上がりましたね・・・さまざまな形態の劇場が1つの建物に入り、相互協力の下にそれぞれの公演が打たれる。
新しい演劇の発信地になってくれればと期待します・・・新しいコンセプトの劇場が作られるというのは、演劇界にとって良い刺激になるんでしょうね。
頑張って欲しいです。
私が見に行った回は、オリジナルバージョンでした・・・今回はバージョン2005という事で一部ダブルキャストのニューバージョンだったようです。
まぁ今回は初見だったのでオリジナルバージョンで良かったかなぁと・・・WEB等で過去の公演のレビューを見て回ってみると作・演出のはせひろいちさんの脚本に対する評価が顕著であるように感じられました。
評価の高い脚本を、オリジナルの役者が再演にあたってより深く広く読み解くことで更なる良作に発展しているのでは・・・そんな期待を胸に出向いてまいりました。
結論から言えば、脚本の技巧に優れているという印象は確かにあった・・・構成に関する独特な趣向、台詞回しの風変わりさ。
そして、それを舞台上に書き起こす演出の特異な印象・・・物語を丁寧に描きながらも、その中に独特な雰囲気を挟みこんでいるというスタンスは、特異であるし、ジャブジャブサーキットという劇団の立派なアイデンティティになっていたように感じた。
そしてまた、他のレビューでも記述されているように、その上質なジャブジャブの脚本を自らの言葉にしきれていない役者の存在にも言及しなければならないだろう。
役者がその世界に生きていない・・・台詞を噛むのが1度や2度なら許せもするが、全体的に噛み芝居になっていたと思う・・・そこにはただ噛んでしまったというよりも、その役を体内に憑依で来ていない、そして芝居がその物語世界に憑依されていない感じだった。
全体として、物語との乖離の印象を受けた・・・今回の舞台は、摂食障害の女性達と積極的にその問題に取り組む病院という関係を借りて、積極障害に対する様々な意見を入れ込んだ意欲的な作品という事は分かった。
しかし、そういう病と患者、そして医師という構図からある種のリアルは全くもって浮かび上がってこず、チープな再現VTRと共に行われる教育ビデオのようなテイストであった・・・演劇がドキュメント性を持つとどうしてもそうなってしまうのではなかろうか?(はたして)。
私自身は摂食障害に関する知識も殆ど無ければ、現場や患者の現実を知っている訳でもないので、細かな指摘はできないのだが、お芝居としてみた時にはそこからはメッセージが一方的に放たれるだけで物語が浮かんでいないのだ。
一つ一つのメッセージには胸を打たれるところもあるし、共感だってする・・・思い知らされることだってあった・・・でも全体を俯瞰するとどうにも解せない弱さがある。
役者の弱さ、台詞を言葉にして世界を自分のものにすることができていない・・・大きなポイントはそこだとは思う。
だけれども、その問題点の裏側には脚本の問題も含まれているのかもしれないという考えに行き着く。
確かにはせひろいちの脚本からは独特な雰囲気と技巧的な台詞作りの上手さを見出すことはできた・・・しかしながら、それらは今回のようなドキュメンタリーに近い内容を含む作品にとっては使いようによっては異物なのかもしれない。
フィクションの作品を大いなる発想と想像によって組み上げるならば、作家のセンスは如何なく振るわれるだろう・・・私が感じ取った作家の面白い部分は、そっちに期待を持たせるものだった。
今回のような、社会の側面を切り抜いたドキュメント性を多く含む作品では、ところどころに入る独特な演出や笑いは面白くは映るものの、総合的な観点からみると違和感を持たざるを得ない。
総じると、役者の弱さというのが一番初めにあるのは確かである。
そこに加えて、今回は語った物語もジャブジャブサーキットらしからぬそれだったのではないか・・・初見の人間の勝手な想像ではあるが、私はそんな印象を持った舞台であった。
是非次回は、よりフィクションによった作品で、作家や役者の力量を感じてみたいと思った。
>>しのぶの演劇レビュー
前回の公演の際のレビューですが、読む限りでは今回のと大差ない芝居だったのではないかと思われます。
全体的な地味さは私の言うところの弱さという部分に繋がるのではないかと・・・そして、別の劇団の役者が演じるとより見ごたえのある作品になるのではないかという指摘があります。
確かに・・・この濃くて静かな舞台を魅力的にさせられる役者が演じるとどうなるか・・・見たい気がしてきました。
あ、でもでも客演の更紗さんは良い雰囲気だったです・・・注目役者に登録です。
>>藤田一樹の観劇レポート
藤田さんは今回の公演を鑑賞されています。
脚本の魅力、そこから放たれるメッセージもあくまでも自然に、そして分かりやすくて良かったという判断のようです。
全体的に満足できる舞台だったみたいですね・・・私も全然満足できていないわけではないんですけど、どうも違和感が観劇後に付きまとった感じで、それを何とか言葉にしてみました。
今回の公演は、ネットを散見する限りそれなりに評価されているようです・・・うーん、千秋楽が良くなかったんかな?。
posted by yositosi at : 22:35
コメント
引用&コメントをありがとうございます。TB返せなくてごめんなさい。
ジャブジャブサーキットについては、なぜか(敢えて「なぜか」と書きますが)、手放しに評価する人が多いです。それはたぶんこの劇団が長年の間、ずっと同じスタンスで活動を続けているからなのではないか、と私はとらえています。
私ははせさんの脚本は好きですし、劇団のスタンスも嫌いではありません。変わらないものというのは、ホっとさせてくれます。
でも友達に薦められないのが悲しいんですよね。やっぱり結果的に作品はアマチュアなので。なので誰かプロデュースして欲しいな、とつぶやいてみました。
投稿者: しのぶ | 2005年09月22日 10:21
大変丁寧なお返事ありがとうございました。
今回の公演は20周年記念公演ですものね・・・20年続けられているというところはなかなか無いんじゃないでしょうか?。
20年続けられる背景には、まぁいろいろと要因はあるんでしょうけど、芝居のクオリティーはもちろんお客さんにも支えられなければ難しいわけで・・・コアなファンがいるのも頷けます。
20年の中で様々なムーブメントがあったわけですが、ジャブジャブさんはそういうことに対してどう取り組んできたんですかね?・・・下手に惑わされなかったからここまでこれたんじゃないかな?そんな気がします。
だからファンもいるんでしょう・・・確かに脚本はまともな本をまともに書く人だなと感じました。
あまりにもまとも過ぎるから、演じる人には魅力的であったほしいと願ってしまいます。
プロデュース・・・いいですね。
投稿者: よっし~ | 2005年09月22日 15:55
トラックバックとご紹介、ありがとうございます。
僕は今までジャブジャブを5作品ほど観ていて好きな劇団の一つですが、やはり作品全体としてはアマチュアのような印象を受けてしまいます。20年間も活動を続けていますし、それがジャブジャブの特色なのかなと思って観ていました。でもそれを特色として片付けてしまうのはもったいない気がしてなりません。
プロデュースなど、違うアプローチではせさんの作品が観てみたいです。
投稿者: 藤田一樹 | 2005年09月23日 00:47